一章

2/19

179人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
季節は秋。 まだ残暑が残る九月の上旬だった。 城南工科大学に通う四期生…安西徹は一人研究室に閉じこもり、実験データの整理に追われていた。 もともと真面目で勉強も出来た安西は卒業認定単位もたりており、就職も某大手企業の研究室への内定を決めていた。 残すは卒業研究と論文のみである。 ふと時計を見ると午後四時を廻っていた。 「そろそろアイツら終わるな」 しばらくすると研究室のドアが開き四人の学生が入ってきた。 「お疲れ~」 「うっす!整理ご苦労!あれ和馬はどうした?」 「先生に呼び出されてそっち手伝ってんだよ。結局俺一人でこの膨大なデータを整理してたんだぞ」 「そうひがむな。頭がいいお前と違って俺らは卒業単位が危ういんだよ。あの教授なかなか単位くれないからさ。四年になってもあの講義取る羽目になってんだよな」 「そうよ。あの講義簡単に一発で単位取れるのあんたと和馬くらいよ。」 「はいはい。とにかくヤスとカナは先生の方を、コウとシゲは俺の手伝いな」 「了~解…そう言えば恵子の姿が見えないんだけどどうした?」 「あぁアイツは帰ったよ。就活で忙しいんだってよ」 「逃げたな…」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加