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それからしばらくたった日の事だった。
九月十八日
徹はレポートの提出が遅れていたため、夜遅くまで研究室に残っていた。やっと目処が付き、時計を見
ると午後十時を指していた。
「遅くなっちまったな…」
安西は電気の明かりだけの薄暗い廊下を歩いていた。すると奥の角を曲がる人影が見えた。
「…恵子?」
安西は後姿に見覚えがあった。恋人の恵子である。
しかしこんな時間に花岡がいるわけない。なぜなら今日はバイトが入っており、午後6時には大学を出
ているはずだった。
安西は急いで確認しに向かうが、角を曲がったその先に、恵子の姿を確認する事は出来なかった。
そこには薄暗い廊下が続くだけである。
「気のせいか…」
徹はあまり気に留めず、大学を出た。
翌日、朝九時。
徹は大学入口にある警備員室にいる警備員に学生証を見せ、研究室へと向かった。
途中恵子の姿を見かけた徹は、昨日の出来事を聞いてみた。
「お前さ。昨日の十時頃何してた?」
「えっ?その頃はまだバイトだけど…何かあったの?」
「いや…なんでもない」
「なんか最近ごめんね。忙しくてまともにデートも出来なくて…」
恵子は申し訳なさそうに徹を見る。
「いいって。もうすぐお前の誕生日だろ?誕生日は二人でゆっくりしような」
「うん!」
恵子はニッコリと笑い、とても嬉しそうに答えた。
二人が研究室の前に立ったとき突然怒鳴り声が聞こえた。
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