ロマン代行者

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ロマンの為に必要なことはなんだ……? ――体力。 ――智力。 ――魔術。 あとは……そうだな。 いつどんな時にもロマンを感受するアンテナと余裕。 そう、だから。 たとえロマンゲームに完敗し、対戦者をロマンチックに殴り飛ばして「……すいませんでした」と餞別を貰ってきた早朝。 黒くて空を覆い隠すビルの隙間をほろ酔いで歩いている最中に、血塗れな少女が、あたかも敵討ちかの如く路地裏から飛び出してきたところで、驚きはしないのだ。 「……邪魔」 ぶつかって来ていきなり、彼女はそう言った。 長い金糸の髪は朝日を照らし返す。 空のような蒼い瞳は、俺の視線をさらに強く射抜いた。 片手には、刃先が真っ赤に染まったナイフ。 ちなみに、俺はどこも痛くはない。ただただ、ぶつかっただけだ。 「……どいてよ。じゃないと危ないよ?」 ナイフをちらつかせ、彼女は軽く言った。 ちなみに細路地を遮るようにして俺は立ち止まっているので、彼女は先に進めないらしい。 「……どいてって言っ……」 「ロマンじゃねぇな」 俺は彼女の非難を遮る。 「アンタ何言ってんの?」 「だってそうだろ? 『彼氏の敵討ちっ!』とか言って俺にナイフ刺してくるならまだしも、そんな真っ赤なロマンに俺は邪魔だと? ちょっとロマンなさすぎ」 「アンタ頭おかしいんじゃ……」 彼女は舌を打って振り返る。 後ろにはワラワラとチンピラたちが十数人。 彼女は慌てて、 「アンタ、強い!?」 「ロマンパワーなら誰にも負けないぜ! それがロマンだからな!」 「……ゴメン。わたしが悪かった……」
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