新居

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マンションに帰り、自分の部屋に入る前、チラッと由利子さんの部屋を見てみた。 まだ電気がついていないようだ。 どこかに出掛けたのだろうか。 もう8時なのに、彼女が居ないのは珍しい。 自分の部屋の鍵を開け、中に入る。 いつもとは違い、電気をつけても、どことなく寂しげな雰囲気が漂っている。 いつも、彼女の家の灯りがついてるのを確認するだけで、僕は安心できていた。 この前、僕の存在で由利子さんは慰められていたと言ってくれたが、それだけではなかったのだ。 彼女の存在もまた、僕の心の慰めになっていたのだ。 今まで1人で住んでいても、寂しいと思ったことはなかった。 だが、彼女が現れてから、僕の中で何かが変わったのだ。 そこまで彼女は僕にとって、なくてはならない存在になっていたなんて、気付きもしなかった。
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