門出

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引っ越しを3日後にひかえた4月13日の夜、僕は橋本と駅前の居酒屋で会っていた。 「えっ!?隣の家の人妻と一緒に住むのかよ!?お前すごいじゃん!よかったな」 「橋本、声が大きいよ」 「いや、ごめん」 僕が由利子さんの事を話していたのは、この橋本だけだった。 こいつは口が固いから、安心して何でも話せる。 「それで、その人の旦那、DVなんだろ?乗り込んで来たりしないのか?」 「うん、その可能性も無くはない。今日までに3回くらい、由利子さんがアザを作って僕の家に来たし…」 「そうか…。とんでもない奴だな。そいつ、前までは優しかったんだろ?きっとリストラでもされて、イラついてるんだよ。このご時世、再就職は大変だからな」
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