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「ッ畜生、こうなるんだったら今朝の天気予報見とけば良かった」
大都会の真ん中、様々な店や建物が立ち並び人々で賑わう通り。
その一角、とあるビルの入り口前で、一人の少年がブツクサと文句をたらしながら、濡れた鞄や服に付いた水滴を払い落としていた。彼の名は興龍寺 翔。黒髪に前髪の金の付け毛、焦げ茶で澄んだ瞳にシンプルな白いシャツと濃紫のズボンを着た中学生だ。
来月には高校入学を控えており、絶賛春休み中の今日は気晴しに、四つ年上の親友とS市に訪れゲーセン道楽三昧……という筈だったが。電車でこの地までやって来たのは良かったものの、目的地に向かう途中親友のケータイが鳴り、親友は直ぐ様取り出し応答する。
「はいもしもし」
待つ事数秒。
親友は話を終え電話を切った。
「悪ィ、事情できて今遊ぶどころじゃねぇわ。暫くしたら戻るからよ、じゃ」
「オ、オイ!」
そうして親友は風の如く走り去って翔の前から姿を消した。その瞬間、
待ってました!!
と時を謀ったかの様に雨が降り出しこの現状だ。
俺、今日ついてねぇ。
溜め息をしながらケータイを取り出し、ディスプレイに表示された時間を見る。
10時25分。
まだこの街に来て30分も経っていない。
ハッキリ言ってツマんねぇ。
親友は直ぐには帰って来れない。
行きつけのCD店にでも行こうかと思ったが、生憎近辺にはその店が無く、かといってこの雨の中向かう気力等皆無に等しい。
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