war.2 -発生- [黄天篇]

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「何時でもお供致しますぞ、兄者」 劉備は二人の言葉に微笑して頷くと、上を見上げて空を見た。 青々と晴れ渡る空に心地好さそうに咲く桃の花。それはヒラリヒラリと少しずつ散りながら風と共に舞い、劉備に、昨年小高い場所から見た故郷の村に咲き誇る桃の美しい景色を思い出させる。 今では、その花弁が散っていく様はどこか儚く、散ってしまった人の命火[いのち]と重なって虚しくも思えてしまう。 「(何としても、平穏な場所は不幸に墜ちてしまう前に助けなければならねぇ。これ以上罪の無ぇ奴等が、自分の手を殺戮という罪で汚す前に)」 劉備は散って舞い降りる桃の花弁にそう誓うと、再び視線を義兄弟に戻し、杯にいつの間にか入ってた酒に気付きそれを一口飲んだ。 全ては咲き誇る桃の花と、罪無き民の為に――  
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