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「だから、ルゥの奴が猫と一緒に拾ってきて――……」
書斎のような一室。
辺り一面紙の山となっており、部屋が紙でできているのではないかという錯覚を起こすほどだ。
床には本棚に入りきらなかった哀れなはみ出し物達が積み立てられている。
さらにその上には羊皮紙やらインクと、机がわりに使っていただろう痕跡が残る部屋。
窓はカーテンで締め切られ、鬱蒼とした紙の森がそこにはあった。
本棚の間から声が響く。
「そう言われても……迷子の面倒を見る器用さも持ってないですし」
声色には呆れたような色が混じっており、極め付けに遠慮のないため息を吐く。相当参っていることが手に取るように分かる空気。
いつまでたっても間の長い一人事が続いている。
かれこれ数十分。
幼い声の主は疲労困憊といった風に受話器と終わりの無い会話を続けていた。
珍しい鮮やかな髪の先まで不満に満ちたように揺れている。
「何でよりにもよって俺なんですか……。国外から来た可能性だってあるでしょう」
黒いレトロな受話器を相手に沈黙と対話、ため息といった行動パターンを繰り返す。
どうやらリムについて話しているらしい。
声の主、ウィルがリムの処理に困っている、といったところか。
リムを運び込む口実に使われた猫が、本の上に飛び乗る。
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