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起きたとき、マキシミンは居なかった。イスピンは目を擦ると欠伸をひとつしてから着替える。
「あれ…?」
ゴミ箱に血まみれの包帯が入っていた。マキシミンの寝ていたシーツの一部にも、慌てて確認した浴室のタオルにも血がついている。よく見ればマキシミンの荷物は置きっぱなしだ。
「……マキシミン?」
昨日うなされていたのを思い出す。心配だった。
また一人で悩んでるのではないか、また一人で苦しんでいるのではないか?
「…馬鹿眼鏡探し、か。全く…馬鹿なんだから。」
赤いベレー帽を被って駆け出す。でも彼女はまだ思いもしなかった。
――まさか、あんなことになるなんて。
「マキシミン!」
街に駆け出したイスピンが見たのは、悪夢のような景色だった。真っ赤な街。
「……え?」
血に塗れ、もう肉塊としか呼べないような物体が足元でぐちゃ、と音を立てた。イスピンが踏んでしまったらしい。
街は、静かだった――否、狂気じみた静寂に満ちていたのだ。
涙と吐気、弛緩しそうな筋肉。全てを押さえ付ける。肉塊…これには見覚えがあった。
「イスピンさん!大丈夫?」
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