0.彼の望んだノクチュルヌ

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 鏡のように自身を映し出したドッペル・ゲンガーが住まう森。それはアノマラードの中に数ヵ所存在するがその中のひとつ、ペナイン森の一区画に紛れ込んでいるるわけではない、唯迷子になった上にドッペルゲンガーに囲まれたマキシミンが頭に一撃を喰らい気絶したのでミストラルブレイドが代わりにドッペルを倒しとりあえず悪趣味極まりない森からとりあえずは出ようと歩いていただけである。もっとも、ミストラルブレイドにも道はよくわからないが。  『……ずいぶん、魂が擦り減ったようだな』  ふと呟く。ミストラルブレイドは所有者の魂を喰らい生きている――つまり魂を喰らいつくしたらまたそのミストラルブレイドを抜くに至る資格を持つような選ばれた人間が現れるまで封印された剣として存在するだけだ。もうすぐ…これも壊れるのであろう。  『…やはり、無理だったか。』  ミストラルブレイドはその魔剣としての運命故に長きの間宿主と共存出来たためしはなかった。強欲な王、強きを求めた騎士、戦いの路を選んだ娘…冬の剣同様に風の魔剣もまた、同じ運命を辿っていた。
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