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冬の剣は救世者が所持している。何年も握り続けられているのは彼がまた救世者だからだろうか…それはミストラルブレイドにはわからなかった。
暗い道を歩む。マナの流れに従うように。唯、足を進める。マキシミンの姿をした赤い瞳のドッペルがミストラルブレイドの前に立ち塞がった。
『下らないことだ、貴様は魔剣。力の代償に命を喰らい生き延びる呪われた存在だ。』
クックッ、と嗤うそれの手にはミストラルブレイドとよく似た黒い剣があった。
『趣味が悪いドッペルだ。我までも模倣するか。』
『否、これはマキシミン・リフクネの可能性の一つに過ぎぬ。魔剣に呑まれ、自らを喪失する可能性だ。我という存在もまたマキシミン・リフクネの幻想の一部に過ぎぬ。剣を鞘に収めた時マキシミン・リフクネは狂気に満ちた存在として貴様の前に立ち塞がる。貴様は一生を共にするような宿主を得ることができないのだ――何故なら、ビアヌに選ばれし者でさえも貴様を操る事が出来なかったのだから……冬の剣とは違って。』
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