0.彼の望んだノクチュルヌ

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 『煩い』  ドッペルを斬った瞬間それは嗤った。剣が鞘に収められており、ミストラルブレイドが斬ったドッペルが言う。  ――…おれはふつうにいきたいだけなのに……生きて、いきて、生き延びる事だけが望みなのに…。  砂塵に帰したドッペルを見てミストラルブレイドは考える。マキシミン・リフクネの望み…それは……『生き長らえること』だ。  『我も結局は踊らされているに過ぎないのかもしれぬ。』  終わらない螺旋に閉じ込められた剣、魂を喰らい生き延びるそれ。いつか…あれは言った。  ――…制御出来るまではこいつを抜かない。  しかしそれは塔の中の話…慟哭が充ち溢れる塔の中。北風を纏う剣を再び手にしたときの話だ。覚えてはいないのだ、ヤツは。  『我は、こやつが生き長らえることを望もう』  剣として、終わらない螺旋に組み込まれる彼を哀れむわけではない。ミストラルブレイドの意志によって。
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