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「ハハ…もうすぐなんだな、俺……。」
気付いてしまった。俺、死ぬんだ。ゆっくりとゆっくりと溜った毒が全身を廻るように緩やかに穏やかに壊されて逝くのだ。心を…魂を……。自分の無駄な推理力を恨んだ。
『…貴様は、幸せだったか?』
また、声が聞こえた。マキシミンは上擦った震えた声で、言った。
「幸せに…か。なりたかったな……なりたかった……。」
『……そうか。』
ただつっ立って涙を流す彼を見る人は居なかった。鼻水をすすり、マキシミンは泣く。
「おかあさんだって欲しかった…父さんも…俺は……おれは…誰かに……必要とされたかった…ふつうに…生きたかった……」
『…普通、か……』
「あったかい家に…石を投げたヤツらは皆母親の声で帰るんだ…。生き生きと笑ってて……あたたかいもの食って分に嫌気も差した。
「結局弱いんだよな……」
だから壁を作る。他人を近付けない。醜い、壁の裏側に隠したような弱い自分を見せたくなかった。
『……そう、か。我も話位は聞いてやる。責任の一端は我にあるから落ち着くまでは――泣いてろ。』
ミストラルブレイドがおとなしくなった代わりに冷たい風がマキシミンの頬を撫でた。
マキシミンは泣いていた。ただ……たまりきったものを吐き出すように。
風の剣ももう、何も言わなかった。
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