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扉の奥はキッチンだ。彼がここに入って、まずすること。それは、
「ご飯ついであげないと」
食器棚から小さめのお茶碗を出して、それに拓磨は、十分前に炊き上がったばかりのご飯をついでいく。
つぎ終わると、キッチンから繋がっているリビングへの障子を開け、仏壇。彼の父母をまつった所に、それを供える。
「おはよう。親父、お袋」
リビングにチーンと、死者の魂に一日の始まりを知らせる音が渡った。
彼、犬井 拓磨は、幼き頃に両親を亡くしている。しかも、殺人と言う名の、この世で一番犯してはならない罪で。
それが起きたのは、拓磨が五才という、やっと物心付いた時だ。
彼の家に深夜、空き巣が入り込んだのだ。
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