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「さてと、卵、卵はっと……」
朝の両親への挨拶を終え、彼は再びキッチンへと戻り、冷蔵庫を漁りだす。
そんな悠長な。と、今の彼を見れば、思う人間は多々いるかもしれない。
しかし、これは彼が決めたことなのだ。
両親が死んだ後、拓磨は、祖母と祖父によって育てられた。
祖母は、自分達が先に逝ってしまった時の為にと、家事全般を教え、自分達の暮らしの為の金をかなり削って、貯金した。
祖父は身を守る為の術にと、自身の趣味でもある武術と、サバイバル的なことを教えた。
「あ、あったあった」
そして、祖父が死に、それを追うようにして、祖母が死んだ。
葬式の金は、別の親族が出してくれた。拓磨も、伯父、伯母に一緒に暮らさないかと誘われた。
しかし、拓磨はそれを断った。これ以上人の世話にはなりたくないと。
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