一、基礎知識

9/26
前へ
/73ページ
次へ
俺は次第に女にのめり込んで行った。 週末にしか会えないのが辛くて、工場時代には仕事を早退して会いに行く事もあった。 女は就職で四月には大阪に行く事を知り、俺は悩んだ。 そんなある時。 俺は息子を保育園に送っていた。 息子は笑顔で俺に手をふり、保育園に入って行った。 俺が車に乗り込もうとしたら、人影が沢山現れた。 「止まれ!山田太郎!お前を逮捕する!」 ワンボックス車を取り囲める位の人数の警官だった…。 いつかは来るだろうと思っていた。 でも、まさか今の瞬間とは思ってもみなかった。 「無駄な抵抗はするな!車に乗れ!」 警官は怒鳴った。 「ちょっと電話だけさせてくれないか?」 俺は自分の車に乗り込みながら言った。 「…。いいだろう。一分だけだぞ。」 警官は助手席や後ろに乗り込んだ。 俺は携帯を開いた。 そして発信履歴から電話をかけた。 プルルルル 呼び出し音が鳴る。 お願いだ。 でてくれ…。 でれないならせめて…留守電になってくれ…。 俺は呼び出し音を聞きながら、祈った。 「もしもし?」 女が電話にでた。 「もしもし、俺。」 俺は言った。 「ごめん、今授業中。もう先生来るから。」 女は小声で言った。 「待って!俺警察に捕まった!手紙書くから!ごめんもう切らないと。」 俺は早口で言った。 「え…。う、うんわかった…。」 女は動揺している様子だった。 「じゃあ。」 俺は携帯を閉じた。 「よし、じゃあ自宅に行くぞ。変な真似をするなよ。」 警官は俺を睨みつけ言った。 「もう観念してますよ。」 俺は笑って言った。 「よし、行くぞ!」 警官は運転席の扉を閉めた。 俺はいつものように自宅まで運転した。 ただし俺の車には警官が沢山いるが。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加