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分厚い本をパタンと閉じて、ふぅっと息を吐いた。
満足気に息を吐いた彼女の手元には、今しがた読み終えたらしい本があった。
少し古びた表紙は、黄ばんでいて当初の色であるはずの白がくすんでいた。その表紙の中で唯一くすみがないのが、黒の筆文字でしっかりと書かれた字だった。
『新撰組』
そう書かれた文字に、一度視線を戻すと再びパラパラと彼女は本を開く。
放課後の図書館は人気がなく、オレンジ色に包まれたこの雰囲気に彼女は毎日のように通っていた。
腰の上の辺りで揃えられた、結われていない髪が光に反射してきらきらと輝いている。それは艶やかな髪である証拠。
梳いてある髪の毛は軽く、空いた窓からの風が彼女の髪を揺らす。左に流してある前髪を気にしつつ、ふと顔を上げた。
ヒラリ
目の前を一匹の蝶々が飛んでいた。揚羽蝶だろうか?黒い羽に鮮やかな模様が描かれている。
何とはなしに視線で追い掛けた。蝶々は迷う節なく図書館の奥へと羽ばたいていく。
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