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彼女は呼んでいた本を閉じて、すっと立ち上がる。そのまま視線の先にいる揚羽蝶を追った。
ヒラリヒラリ
「……待って…」
無意識に出た言葉。彼女は蝶々に導かれるように、そのまま図書館の奥へと足を運んだ。
本棚と本棚に挟まれた通路は、太陽の光が届かず人工的な蛍光灯の灯りだけに照らされていた。
出口などあるはずもないのに、速度を緩めることなく飛んでいく揚羽蝶。
そしてその揚羽蝶を追い掛ける少女。
揚羽蝶が行き先をなくし、壁に止まった。まるで最初からその壁が目的だったかのように。
そして次の瞬間、壁に止まった揚羽蝶を中心に壁が淡く光り出す。淡い光は次第にその存在を露にし、壁に不可解な紋様が浮かび上がる。
蛍光灯が何度か瞬きを繰り返すが、彼女は気にした様子もなく虚ろな目で片手を上げた。
揚羽蝶を中心に浮かび上がった紋様は、光を帯びて彼女を包み込むかのように光を放つ。彼女も惹かれるかのように、中心の揚羽蝶に触れようとした。
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