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“未来のための過去”
触れようとした瞬間、聞こえたと言うよりは頭に直接流れ込んできた声にはっ、とする。
しかし、覚醒した頭で現状が理解出来るほど時はなく、彼女が揚羽蝶に触れた瞬間光は弾けるように一気に眩しさを増した。
耐えきれなくなって両手で光を遮るが、それでも追い付かないほどの光は彼女を包み込んだ。
「……………っ!?」
声にならない叫び声は誰に聞こえることもなく、彼女は耐えきれなくなったかのように意識を手放した。
図書館の蛍光灯が何度かの瞬きの後、何もなかったかのようにいつもの灯りを取り戻した。
灯りに照らされた図書館も、何事もなかったかのように時を取り戻す。
唯一、机に取り残された『新撰組』と書かれた本だけが、時が止まったかのようにぽつんと取り残された。
外は夕焼けから夕暮れへと変わりつつあった。
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