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先ほどまで学校の図書館にいたはずの自分がなぜこのような場所にいるのか。
皆目見当がつかなかった。
しかし困惑する彼女の耳には、更にざわざわとした人の声が届いてくる。彼女は安堵感を感じて勢いよく橋を見上げた。
「……………え」
彼女はそのまましばらく橋を凝視したまま声が出なかった。
その間にも野次馬である人は次々と増えていくばかりだ。しかしその集まる人こそが彼女の目を奪っていた。
いや、正確に言えばその人たちの格好に目を奪われていた。
橋の上にいる人たちは皆が着物を着ているのだ。よく見れば、橋もよく見る鉄橋ではない。半円の弧をゆるやかにした木の橋である。
そう、まるでよく時代劇で見るような…。
まるで時代劇の中にいるようだ、と彼女は思わざるをえなかった。
◇◆◇◆◇
ヒラリ
目の前を横切る蝶に軽く驚いて、思わず視線で追った。しかし、蝶よりも気になる人だかりが視界に入る。
集まれるだけ集まった人だかりは、橋の上に集中していて、全員下の方に見入っている。
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