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「土方さぁーん。私橋の方を見て来ますねー」
店の入り口でそう言うと、相手の返事も聞かずに走りだした。すると、店の入り口から顔だけをのぞかせる姿があった。
「何?おいっこらっ!待ちやがれ総司!!」
「お客さんお代金!!」
顔を出すと、同時に走って行く連れの姿を見つけて自分も慌てて後を追おうとする。しかし店主の声に足を止められてしまう。
「あぁっくそっ!これでいいだろっ?釣りはいらねぇ」
台の上に置かれた二本の刀を乱暴に掴み、ジャラン、と適当に金を置いて行く。
「へい、毎度あり」
店主の機嫌よさげな声を背中に受て、“土方さん”と呼ばれた男は急いで連れの後を追った。
「ぁんの馬鹿。面倒ごとに首突っ込まねぇといいんだが…」
ぶつぶつと走りながら先を急ぐ土方。
真っ黒な着物をゆるく着流し、見た目だけで言えば悪人顔。しかしその顔は整っていて、目鼻立ちがくっきりしている。
今しがた受け取った刀を一本腰に差して、走るスピードをあげた。
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