日常

1/2
前へ
/9ページ
次へ

日常

がちゃ…ばたん。 ああ、彼女が帰ってきたみたいだ。 ―お帰り。 「ただいまぁ…。」 ―どうしたの?暗い顔して。 「はぁ…またフラれちゃったよ…。」 ―僕がこの部屋に住み始めてから、何連敗だっけ? 「あーあ。これで7連敗かー…あたしってきっと女としての魅力がないんだなー。」 ―そんなことないよ。周りが気付いていないだけさ。そのうち、わかってくれる人に出会えるよ。 「何も言わずに話を聞いてくれるのは君だけだよー、ひーん。」 ひとしきり泣いて、涙腺の蛇口が閉じたのか、彼女は僕をじっと見つめる。 薄く濡れた瞳。 頬に残る幾筋の涙の跡。 僕も彼女を見つめ返した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加