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未来のない僕だから
カーテンの隙間から射し込む朝日。
舞台の中央でスポットライトを浴びる主演女優のような満開の笑顔で、彼女は嬉しげに男をゆすり起こす。
「朝だよー!おはよーダーリンっ!」
男はダーリンと呼ばれ、満更でもなさそうな顔を一瞬したが、まだまだ寝足りないようで、布団を頭まで被りもそもそしてる。
「ほら、あたし特製朝定食!食べて遊び行こ!」
無理やり布団をひっぺがされる。
開け放った窓から吹き込む春風に裸の背中をくすぐられ、男は渋々上半身を起こした。
大きな欠伸をしながら、座ったまま背伸びをする。
ふと、ベッドの頭側に据え付けられているローボードに目をやると、男は動きを止めた。
美術館に展示されているおかしなポーズをした石膏像のように動かなくなった男の視線を追い、彼女はきょとんとする。
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