未来のない僕だから

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そこには無数の青い花びらが散らばっていた。 ローボードいっぱいに広がった花びらと。 その中心に佇む、透明からベージュのグラデーションがかかった花瓶。 男にはその様が、異常な透明度の海に浮かび、ゆらゆらと波に誘われる棺桶に見え、なぜかもの悲しい気分になった。 きょとんとしたままの彼女に話しかけたのか、それとも一人言だったのか、あるいは他の何者かにだったのか。 散っちゃったね、と呟やく男に、彼女は不思議そうに答える。 「うん…でも、これ、造花なのに…。」
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