由美子

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   2交代制の夜勤は長い。    夕方16時30分から翌朝8時30分までが勤務時間だ。    うらびれたその病院は、夜勤者の半分以上をアルバイトに頼っていた。  よほど人手不足なのだろう、姥捨て山に捨てられたような患者達とさえ、見分けがつかない程高齢な看護師もいれば、髪を金髪に染め、ピアスをいくつもつけた、ナースの制服がまるでコスプレにしか見えない若い看護師もいた。    竹内 由美子(たけうち ゆみこ)はこの病院の常勤だった。    15年間呑気な専業主婦をしていたが、昨年離婚する羽目になった。  9才年上で内科医の彼女の元夫は、 『由美ちゃんは花でも摘んで、歌でも歌って生きてれば良いんだよ』 との結婚当初の言葉通り、何不自由ない生活を由美子に与えた。  子供は2人生んだ。子供が生まれてからは、花でも摘んで……とはいかなかったが、それでも夢のような生活だったのだと、今になれば彼女にもわかる。    しかし、その幸せは結婚10年目には終わっていた。    由美子の元夫は、20才近くも年下の看護学生と不倫をした。
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