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根が正直なのかバカなのか、由美子の元夫はあっさりと浮気を白状した。
『そんな若い子と付き合って、妊娠でもさせたらどうするつもりだったのよ』
激昂してなじる由美子に、元夫は神妙な顔でうなだれた。
『そうしたら、一生彼女と子供の面倒をみるつもりだった』
どこまでバカな男かと由美子は、その男の顔をまじまじと見つめた。
元夫は日本で一番、入るのが難しいと言われる大学を出ていた。
『彼女とは別れる。魔が差したんだ……』
尚も矛盾だらけの言い訳を繰り返す横面を由美子は力いっぱい叩いた。
由美子はそれ程元夫を愛していると言う自覚はなかった。
しかしそれは『信頼』と言う名の愛に変わっていただけだったのだと知った。
『信頼』していたからこそ――底無し沼のような嫉妬と怒りに、由美子は飲み込まれて行くのだった。
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