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由美子は数え切れない程の男の中から、実際に会えそうな男だけを選んでメールのやり取りを始めた。
中にはかなり遠い所に住んでいる男達もいたが、それは
『会えるなら、車を飛ばして会いに行く』と言う熱意のある言葉に負けてのことだった。
体目当て――ただそれだけで、言い寄って来る男達を由美子は歓迎した。
愛など望んではいなかった。望んでいないどころか、恋愛感情を全面に出されると、途端に白けた。
付き合うつもりなど、ハナから由美子にはなかったのだ。
性の対象になれれば満足だった。
『私を女として見てくれる男がいる』
群がる男達によって、粉々に砕け散った『女としてのプライド』が、少しずつ修復されて行く心地良さに、由美子は酔いしれた。
『まだ大丈夫……私は女だ』
自分に欲情する本名さえ知らない男達に抱かれながら、由美子は精神の均衡を必死で保とうとしていた。
不思議と罪悪感はなかった。罪悪感のないことに由美子は罪悪感を感じた。
元夫には、あえて言う必要もないことであったから、自ら『浮気しています』と言い出しはしなかった。
しかし隠すつもりもなかった。バレても構わない……いや、むしろバレてしまえば良いのにと由美子は思っていた。
自分の浮気がバレれば、もう離婚しかなくなるだろう……そうなることを心のどこかで望んでいた。
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