オウム

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「ほら!もっと口大きく開けないと声でないよ!腹式呼吸を意識して、喉を開けて発声するのよ。わかった?」 「は、はい!」 音楽室では、優一のコンクールへ向けた猛特訓が行われていた。 「OK!少し休憩しましょう、喉も少し休ませてやらないとすぐ声が出なくなっちゃうから。」 「は~、やっぱり難しいよ、加奈ちゃん、僕なんかがコンクールに出場して、加奈ちゃんの代役をするなんて。」 椅子に座って休憩中の優一は加奈に不安を漏らした。 「何、弱気な事言ってるのよ、元はといえば優一のせいなんだから、しっかり償って貰うわよ。」 自分のせいだと言われ、優一は少し申し訳なさそうに黙ってしまった。 不意に加奈が口を開く 「でもね、優一の自分の声が嫌いっていう考えも、今ならその気持ち、理解できるな、私も自分の声が綺麗じゃなかったら、きっと何にも出来なかったと思う、色んな事に自信を持てなかったと思う。だから、このコンクールで優一には自信を持ってもらいたいんだ!」 「このコンクールで、自信を・・・つける?」 「そう!、今の優一は嫌いだった自分の声じゃあない、だったらもっと自信を持って物事に取り組めるはずだよ。」 加奈は自分の声が今の優一の声だと言うのに、そんな事お構い無しに優一を勇気づける。 「でも、ずっと加奈ちゃんの声でいることは出来ない、また自分の声に戻ったら、また同じ事の繰り返しになっちゃうよ。」 自分の声に自信がない、それだけが優一の深い悩みだった、その声を使って加奈を助けた事があるにも関わらず。 「優一・・・・・・・じゃあ私が優一の声を変えてみせる!」 「え?・・・」 「今の優一の声、私も発声の練習とかして、少しでも優一の声を変えてみせる!それなら元に戻っても、優一は前の自分の声とは違う声になっているって事になるでしょ?」 「うん、・・・・・そういう事になるけど。」 「だったら二人で頑張りましょう!、優一はコンクールで優勝する、私は優一の声を変えて優一に返す。これでどう?二人とも損はしないと思うけど?」 加奈は自らに課題をかしてまで、優一の奮起を待っている。 「・・・・・・わかったよ、加奈ちゃんの為に僕コンクールで優勝してみせる!」 「よし!そのいきだ!さあ休憩終了!発声からもう一度やるよ!」 「うん!」 二人は相手の為に努力する事を誓ったのだった。
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