カナリア

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集まっていた、人達もいなくなり、静かな音楽室がそこにはあった。 「加奈お疲れ様、すっごい良かったよ!」 どうやら数人の生徒は残って校内のカナリアと話しを楽しんでいるようだ。 「ありがとう、皆にそう言ってもらえると、嬉しいな。」 「私も加奈みたいに歌が上手になりたかったな~。」 「今からでも上手になれるよ、発声の練習しだいで声の出方が全然違うんだから。」 「本当?」 「もちろん。合唱部に入部してくれたら、いくらでも付き合うよ。」 「交換条件ってわけ? 今の部活は辞められないよ~」 「じゃあ教えられないな~。」 ちょっと意地悪な顔を加奈はみせ、相手の生徒を手玉にとっている、そこに割り込んできた声があった。 「・・・加奈ちゃん」 小さな低い声、ドラマでいえば、ハードボイルドな刑事の役がぴったりな渋い声、しかしその声の発信者は子供のような顔をして加奈の事を見ている。 「優一、どうしたの何か用事?」 「加奈ちゃん教室に筆箱忘れてたから、届けに来たんだけど、音楽室、凄い人の数で入れなかったから。」 優一はそう言って、うつむいてしまった、ぱっと見は、高校生には決して見えない幼さの残る表情をしている、だがそれとは正反対に彼の声は渋い。 「そっか、ごめんね、わざわざ届けてもらって。」 「いや、気にしないで、じゃあ僕もう帰るから。」 「待った優一!、私も今帰るから、一緒に帰ろ?」 「え?・・あ、うん」 部活の後片付けをすませた加奈は、優一の腕を引っ張りながら音楽室を出ていった、後ろから見ると、お姉さんと歳の離れた弟のようだ。
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