死体曰く、

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「あたしピアノって結構好きなんだけど、聞く曲はモーツァルトとかばっかりなのね。いわゆる、軽快で明るい曲が好きなの。でも二階から聞こえてくる曲は、それとは正反対だった」 「でもなぜか、あたしは吸い寄せられるような気がした。いつまでも聞いていたいような気がした。この曲がずっと終わらないで欲しかった」 「不安定で、メロディは悲しいのか恐ろしいのか楽しいのかはっきりしなくて、盛り上がったり静かになったり変化がひっきりなし。躁鬱病の患者みたい」 「でも不思議と嫌じゃない」 「決して、心地よいわけでもないんだけどね」 「あたしはどんな人が弾いてるのか気になった。でね、二階の扉を開けたわけ」 「扉は古めかしい木製で、開けるときりんとベルの音がした」
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