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死体曰く、

「そこは……そうね、ジャズバーみたいな雰囲気だった。床は木目で、壁も木。壁紙だとは思うけど。黒いカーテンが日の光を遮っていて、オイルランプが灯っていた」

「席は五つくらいしかなかったけれど、大きなグランドピアノが置かれていた。何だかアンバランスな感じ。グランドピアノをアップライトピアノに変えれば、もう少し椅子が置けるだろうに。そう思った」

「お客さんは誰もいない。ただ、ピアノの前に誰か座っていた。その人は演奏を中断して、こっちを向いたの」

「落ち着いた表情の、初老の男性だった」

「その人は目だけで笑い、いらっしゃい、って言ったの」

「その人は黒いズボンと黒いエナメルシューズを履いていて、薄暗い中では漆黒のピアノと一体化しているように見えた」