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「もうちょっとさくさく話していくね」
「そんで、あたしはその人とおしゃべりしたわけ」
「何話したっけなあ、まずその人がお茶を入れてくれて、そのお茶が美味しいとか、そんな話だった気がする。世間話」
「その人の受け答えはどこかミステリアスだった。何ていうか……そうね、その人の目はあたしを見ているんだけど、本当はどこか遠く、あたしの想像もつかないようなどこか遠くを見ているような気がするの」
「何ていうか、私の世界とその人の世界が、完全には繋がっていないっていうかさ。笑わないでよ。そんな気がしたんだって」
「そこに確かにいるんだけど、存在がおぼろげな感じがした。他の机とか、椅子とか、床とかと比べると、その人は確かに存在しているっていう確信が持てなかった。その人は現実から浮き上がって見えた」
「変な人だなって思ったよ。あたし、思わず腕に触っちゃったもん。幽霊か何かじゃないかと思って。いや、ちゃんと触れたけどね。うん、ちゃんと実体だった。その人は不思議そうな顔をして、少し笑った」
「そして言った。これは例え話ですけれども――」
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