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ちりん――
鈴の音が鳴る。心に奥底まで響いてくるような、不思議な、不思議な音色だ。
これは夢……幻想……
「違うな……幻想ではあらぬよ、坊……お主の夢ではあるがな」
夢……か……またこの夢……たまに見る夢……
夢の中には一人の女性がいた。深黒に染まるこの世界に、白銀の輝きを身に纏いその場にただ存在している。
初雪のような白く淡い長い髪に、鈴のついた髪留めを二つ左右に付けている。
幾重にも折り重なる重々しい十二単と言う着物。赤と白を基調とした着物を着て白い扇子を持っている。顔はなぜかぼんやりとしか見えない。
「そう嫌がるな。我とてお主はあまり好かぬ」
優雅な声。なぜか神々しい雰囲気を持つ女性。髪をかき上げる……腕を振る……息を吐く……たったそれだけのこの女性の動作、その一つ一つが威圧感を放つ。
気に入らないなら、現れなければいい。
「そう言う訳にもいかん……お主の為ではなく我が友の為じゃからな……」
友……?
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