神楽舞うなり

2/3
31556人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
ちりん―― 鈴の音が鳴る。心に奥底まで響いてくるような、不思議な、不思議な音色だ。 これは夢……幻想…… 「違うな……幻想ではあらぬよ、坊……お主の夢ではあるがな」 夢……か……またこの夢……たまに見る夢…… 夢の中には一人の女性がいた。深黒に染まるこの世界に、白銀の輝きを身に纏いその場にただ存在している。 初雪のような白く淡い長い髪に、鈴のついた髪留めを二つ左右に付けている。 幾重にも折り重なる重々しい十二単と言う着物。赤と白を基調とした着物を着て白い扇子を持っている。顔はなぜかぼんやりとしか見えない。 「そう嫌がるな。我とてお主はあまり好かぬ」 優雅な声。なぜか神々しい雰囲気を持つ女性。髪をかき上げる……腕を振る……息を吐く……たったそれだけのこの女性の動作、その一つ一つが威圧感を放つ。 気に入らないなら、現れなければいい。 「そう言う訳にもいかん……お主の為ではなく我が友の為じゃからな……」 友……?
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!