前門の虎、後門の狼

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◇ 遅いわ…… 謙彦から神社に突入すると電話があってから、かなり時間が経っている。三十分以上は経ってる筈だ。 苛々するから時計を見るのは止めた。最近どうも怒りっぽくなっている。 この喫茶店に入ってからもう一時間は軽く過ぎただろうか。 もうコーヒーのおかわりはする気も起きない。 まあ、客は少ない人気のない所だから構わないだろう。 人気がないから四人掛けの席に一人で座れるのも、広々として快適だ。このクソマズイ、コーヒーをなんとかすれば本当に快適なのにね。 「…桐沢…おは…」 「ん?」 私の名前を呼んだのはシルバーブロンドの神龍高校の制服を着た女。眠たげな瞳で何を考えているのか推測しにくい。 椅子を引き目の前に図々しく座り始めた。 「ちょっと!なんでそこに座ってんのよ!てか誰よあんた?」 怒鳴り付けてみるが動じた様子がまるでない。 誰かは知ってはいる。ファンクラブまであるらしい、眠りの来栖姫なんてふざけた呼び名を付けられている女。 面識など一度もない筈だ。 「いらっしゃい。来栖ちゃんは何にするの?」 店員が直ぐさま現れた。気に入らない。ヘラヘラ笑っている態度が気に入らない。一度ぶちのめしてやりたいわね。 あはは殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい! 「…桐沢…」 その声に気付き負の感情が消えて行く。今何を考えていた……?最近私はおかしい……何なのこの自分の感情が暴走しているような感じは……
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