前門の虎、後門の狼

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「…何をそんなに苛々してるの…?…あ…来栖ペシャル抹茶バージョン…」 「はい、来栖ペシャル抹茶バージョン一つ」 店員の男はメニューを繰り返し去って行った。 来栖ペシャル?何その阿保なメニュー。 来栖は眼鏡を取り出しかけだした。この子目が悪かったかしら?なんかじろじろこっち見てくるのは何? 「…ふーん…桐沢…直接ツカレテはないみたいだけど………んー……押さえ込まないと破滅するよ…?」 破滅?何言い出すのこの子……ツカレテ?疲れて?突かれて?どの意味か分からない。 「…そろそろ電話来るから…用意するといい…」 何なのこの子。席移動する様子もないし。 ん?ポケットに入れてマナーモードにしていた携帯が振動した。 ……謙彦か。 「ちょっとあなた。席移動してくれるかしら?」 あまり聞かれたい電話でじゃない。面倒だから移動して欲しい。私が移動するなんて有り得ない。 「…西崎謙彦からの電話…早く出た方がいい…」 「なっ!なんで知ってんのよ!画面見えてない筈なのに……」 「お待たせしました!」 間の悪い事に店員がやって来た。例の来栖ペシャルなんとかという、私の顔の二倍くらい大きい抹茶パフェ? 何あれ……食べれるの?あの子…… こちらを無視して真剣な表情でスプーンを手をグーにしてギュッと握り、アイスを食べ始めた来栖。
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