124人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
松永は永遠と続く会議に退屈を隠せないでいた
昔はもっと強引に買収しても文句など言われ無かったのに…
会議資料をペラリと捲りつまらなそうに溜め息をついた
隣に座る秘書の三好がわざとらしく咳払いして注意するが、松永はそれを軽く流してもう一度溜め息をついた
松永は、最近構い始めた赤毛の無口な子猫の事を思いだした
知り合いの会社の役員からの紹介だった
妻を早くに亡くした松永は、今まで家政婦を雇っていた
その家政婦が年老い引退してしまい困った、と世間話のつもりで喋ったところ、ならばと受けた話だった
やってきたのは、橙色の鮮やかな髪をしたひょろりと細い少年だった
しかも無口
最初松永は、いじめてやろうと考えていた
まだ高校生の少年に何が出来るというのだ
細かくいびれば直ぐに辞めるだろうと思っいた
所が、役員の兄弟と言う少年は、松永の想像以上に良く働いた
毎日の掃除に始まり洗濯、アイロンがけまで、全てが完璧だった
おもわぬ拾い物をしたものだ
松永は小太郎のちょっと困り気味に歪んだ顔を思い出し、クスリと笑った
それを見た三好は、ウンザリと眉をしかめるのであった
最初のコメントを投稿しよう!