梟と猫

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「ではそのように頼むよ」  松永はやっと終わった会議の出席者に向けて、そう声をかけて席を立った  出席していた社員が頭を下げるなか、松永は足早に会議室を出ていく  廊下で胸元から取り出したのは私用の携帯電話  慣れた手付きで短縮ボタンを押し相手が出るのを待った  小太郎は何を歌おうかと分厚いリスト表を捲っていた  隣で幸村がかなりの美声を披露していた  熱血な彼は歌も漢臭いのかと思えば、ロックバンドのナンバーを爽やかに歌いこなし皆を驚かせる 「まだ決まんねぇのか?」  そう覗き込んできた元親に、小太郎は慌ててページを意味無く捲ってみた  そんな小太郎に向かって元親は「別に慌てんなよ」と笑いかけた  そんなとき、不意に尻ポケットに入れていた携帯電話が振動した  携帯電話を取り出せば、メールではなく電話の着信だった  通話ボタンを押して耳に当てれば、「小太郎かね?」と松永の声が流れて来た 「…」 [おや何やら騒雑しいね…ふむカラオケかな?] 「…」 [夕飯でも一緒にどうかと思ったのだか、どうかね?美味しいと評判の中華の店などどうだね] 「…」 [予約しておこう。近くに来たらまたかけるとしよう]
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