梟と猫

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 毛利元就は受話器から聞こえる、カラオケと笑い声にその少女のような顔を歪めた。 「政宗…部屋の番号を早く教えろ」 [39だ…39!早く来い!] 「まったく…」  携帯をしまった元就に、一人の壮年の男が声をかけてきた 「すまないが、自由館というカラオケ屋を知らないか?」  声をかけられた元就は、一瞬に男の身なりをチェックする  カシミアのコートに一目でオーダーメードと分かるスーツ  サングラスをかけた姿は一見堅気には見えない 「構いませんよ。丁度そこに行く所でしたから」 「それは良かった。所で君は婆裟羅高校の生徒だね?」 「そうですが?」  そう答えた元就に、男は小さく笑みを作った  小太郎はそわそわと落ち着きが無かった  佐助の歌にも上の空、小太郎は携帯電話をいじったり意味もなくテーブルを拭いたりしていた 「なーにしてんの、次コタローの番だよ」 「…」  手渡されたマイクをじっと見つめる  画面には先ほど入力した男性アーティストの恋愛ソングのタイトルが流れた  前奏が流れ、小太郎はマイクを構えた  その時、部屋に遅れてきた元就が入ってくるのが見えた
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