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それから数日、私は何度も交渉を重ねたが勿論一切許されなかった。痺を切らした私は脱出を試みる事にし、彼女が来る時間を細かにチェックし、五日間日を置いて決行した。
夜の病院なら人も少ないだろう。部屋からまともに出た事がない私は、憶測でしか進めない。階段が何処に在るか以前に、この廊下の先が何処にたどり着くのかさえ知らない。それでも私は逃げなくてはいけない。
「…あった。」
階段。踊り場に書かれた数字は四階を示している。今の所はまだ人の気配を感じない。このまま一階まで降りた所で問題はないだろう。だが、万が一此所で出会してしまえば、逃げ道はない。…そう言った所で、此所を降りるしか自分には選択為ようがないのだが。
「…」
足音を響かせない様に慎重に一段ずつ降りる。裸足の所為でヒタリと触れる床が冷たい。
――やっと一階降りる
「っ!?」
何だ、此れは。
先程四階から降りてきた筈なのに、足元の数字は六。私は階段を降りた筈だ。真坂と思い近くの窓に張り付いて外を見る。残念な事に灯り一つ見えない。――此所は今何階なのかさえわからない。私は階段に居るのが気味悪くなり、とりあえずこの階を見て回る事にした。大して先程居た階と変わりない。まぁ、其れが普通なのだが、此所では其れが通用しない気がする。
「…?」
白い扉が並ぶ廊下に、不自然なパステルピンクの扉が一つ。正直、凄く興味が湧いた。だが、こんな不可解な所の不可解な扉。触らぬ神に祟りはない。私は先へ進もうとした――が、ヒタリ。私の他に裸足で歩く足音が廊下の端、私が来た方から聞こえる。逃げねばならない。でも、気付かれてはならない。
パニックを起こした私は、手近な扉に飛込んだ。
――目の前にあった、ピンクの扉に。
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