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亜依奈がポツポツ言葉を紡ぐ度、私の脳裏にその情景が映された。
その何れもが、母親からの暴力。それでも愛して、愛されようとする亜依奈の姿。虐待を受けても、やはり母親を愛している亜依奈のなんと健気な事か。
知らず涙が流れだす。
酷い母親、とは思わない。唯、可哀想な人だと思った。
最愛の夫の死。其れから彼女は自分の歯車を狂わせてしまった。――自分を愛している最愛の娘を忘れる程。
亜依奈は賢明に母の傷を癒そうとする。けれど母は其れによって彼を忘れてしまいそうで怖かった。何も、見たく無かったんだ。
現実も、自分も、全て――…
心の奥では娘を大切に思うのに、触れたら彼の思い出ごと消えてしまうのでは無いかと怯えて。
――ねぇ、もう大丈夫だよ。
貴方は、独りじゃない。ちゃんと待っていてくれる人がいる。
愛してくれる人がいる。
――狂わせた歯車なら、正せばいいから…
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