61人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
天体観測
午前二時 フミキリに
望遠鏡を担いでった
ベルトに結んだラジオ
雨は降らないらしい
二分後に君がきた
大袈裟な荷物しょってきた
始めようか 天体観測
ほうき星を探して
深い闇にのまれないように
精一杯だった
君の震える手を
握ろうとしたあの日は
見えないモノを見ようとして
望遠鏡を覗きこんだ
静寂を切り裂いて
いくつもの声が生まれたよ
明日が僕らを呼んだって
返事もロクにしなかった
「イマ」というほうき星
君と二人追いかけていた
気が付けばいつだって
ひたすら何か探している
幸せの定義とか
哀しみの置き場とか
生まれたら死ぬまで
ずっと何か探している
さぁ始めようか 天体観測
ほうき星を探して
今まで見つけたモノは
全部 覚えている
君の震える手を
握れなかった痛みも知らないモノを知ろうとして
望遠鏡を覗きこんだ
暗闇を照らすような
微かな光 探したよ
そうして知った痛みを
未だに僕は覚えている
「イマ」というほうき星
今も一人追いかけている
背が伸びるにつれて
伝えたいことも増えてった
宛名のない手紙も
崩れるほど重なった
僕は元気でいるよ
心配事も少ないよ
ただひとつ
今も思い出すよ
予報はずれの雨にうたれて
泣きだしそうな
君の震える手を
握れなかったあの日を
見えてるモノを見落として
望遠鏡をまた担いで
静寂と暗闇の帰り道を
駆け抜けた
そうして知った痛みが
未だに僕を支えている
「イマ」というほうき星
今も一人追いかけている
もう一度 君に逢おうとして
望遠鏡をまた担いで
前と同じ 午前二時
フミキリまで駆けてくよ
始めようか 天体観測
二分後に君が来なくとも
「イマ」というほうき星
君と二人追いかけている
最初のコメントを投稿しよう!