658人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄さん、起きて」
雀の鳴く音と共に優しい声が頭を包み込む。
「ん……うん……ん」
うっすらと目を開くがぼやけてよく見えなかった。
不鮮明ながらもかろうじて見えたのは桃色の物体。
あぁ、これはきっといつか小日向がプレゼントしてくれた俺の趣味に合わない素敵な抱き枕……。
そう思った俺は迷わず、
「ん~~……」
素敵なそれを抱きしめた。
柔らかくて気持ちが良くていい匂いがする。
流石は小日向セレクト。
桃色でも最高の抱き心地。
だから今もクローゼットに封印せずに愛用している。
そしてそのままもう一度睡魔の差し出した手を取ろうとする。
「な…な……な、何やってるの~~!!」
が、しかしそれは例え天や睡魔が許しても奴が許さなかった。
部屋中に女の子特有の甲高い声が響く。
「うわっ!何だぁ!?」
お玉でステンレスフライパンを叩いたような大音量の中で俺は寝ていられるはずもなく慌てて飛び起きる。
辺りには何もなく、代わりにベッドで真っ赤になりながら寝ている少女が一人いた。
最初のコメントを投稿しよう!