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しかし,それに気づかないのか気づいていないふりをしているのか,主はまた書物に視線を戻しながら言葉を続ける。
「でも大陰陽師になってからは宵藍も今と同じくらい普通に接してくれるんだよ」
「…そうですか」
「…だからね,天后。
その"さっさと寝ろ"って視線を送るのは止めてほしいんだけど」
今は夜中。
ひっそりと静まり返った夜遅くなのに,昌浩は月明かりと灯火で書物を読みふけっていた。
その後ろに控えている天后は,さっさと昌浩に睡眠を取らせたいのだが,何しろ彼が祖父に似て頑固でちっとも横になろうとしないのだ。
昌浩は大陰陽師と呼ばれるようになってからは毎日が多忙で,あまり夜は寝ていない。
「昌浩様。
そろそろ横になって下さい」
「でもさ,天后…」
「"でも"じゃありません」
ピシャリと彼女に言い放たれて,昌浩は思わず苦笑した。
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