中指と薬指

2/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
あれは、雲一つない快晴の日だった。 いつも通り俺は、西新宿に建ち並ぶビル群を掃除していた。 昼間だというのにビルの中は薄暗くて、時折慣れ親しんでいる硝煙や血の匂いがうっすら漂ってくる。 …そういうビルはもっぱら俺が専門だ。 ヘルクリーン社で裏仕事に足突っ込んでるのは精々三分の一程度。 自分の身を自分で守れない奴は、ここみたいに命のやり取りを日常としていそうな場所になんて配属されない。 俺は『掃除屋』の裏名を持つスナイパー。 別に…殺しは、キライじゃない。 掻き集めたゴミをまとめて裏口からビルを出た。 丁度ビル群の端側だったみたいで、健康的な青空を一望出来た。 ゴミを処分し終わり軽く伸びをして、昼飯何にしようかなんて考えていた―― ら。 『ヨォKK。暇してっか~?』 …青天の霹靂。 何もない所から突然現れた自称『神サマ』がいつものニヤリ笑いで宙に浮いていた。 いつもなら忙しい、とか仕事がある、とか言い訳をして追い払うんだが、今日に限ってシフトは午前中だけ。 勿論この見た目ガキな野郎もそれ承知で現れたのだろう。 というか、何日も前から俺の職場でコイツが休みを取れと騒ぎ立てるもんだから、店長のジジイも気を回してしまったらしい。 余計なことを… 俺が思考にふけっていると、唐突にMZDが俺の腕を引っ張った。 『お前と一緒に行きたいトコあんだ』 …? 訳も分からず俺は腕を掴まれ引っ張っていかれた。 着いた場所は―――
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!