中指と薬指

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神社だった。 うっそうとした森が長い石階段を囲んでいる。 余程年季が入っているのだろう。階段は形が崩れていたし、幾つか並んでいる鳥居は所々朱色がはげている。 MZDは鼻歌混じりで楽しそうに階段を登って行く。 俺ものんびり相手を追った。 『とーちゃく~』 山の頂上にある神社だ。 参拝客もあまり来ないのだろう。この古ぼけた建物は触ったら壊れそうだ。 四方は大きな木が何本か立っていて、緑色に染まった崖が神社を囲んでいる。 眼下にはポツポツと灯が点いた町並みを一望出来た。 俺は昼過ぎからずっとMZDに腕を引っ張られ、昼飯抜きで山登りしたことで軽く疲労していた。 MZDは崖の様な斜面を前にして街を眺めていた。 丁度夕暮れ時のようだ。太陽の光を真っ向から浴びてるMZDは黒く見える。 『ここは俺の大好きポイントの一つだぜ。ホントは木登りした方がもっと景色綺麗なんだけどさ』 MZDは崖に足を泳がせながら座った。 俺も何となく習って隣に座った。 チラッとMZDの様子をみた。 いつもは童顔でヘラヘラ笑っているのに、今は大人びた優しい笑顔を浮かべている。 夕日を浴びた横顔。 暫く魅入っていたらMZDがこっちを向いた。 目が合う前に慌てて夕日を眺めた。 プラプラ足を揺らしてMZDも再び夕日を眺めた。 『お前と一度で良いからココ来たかったんだ』 『?』 首を傾げて俺は相手を見た。
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