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『邪魔者いねぇし、景色もいいし。夜は星が綺麗だぜ』
言われて俺は空を見た。まだ明るいのにちらほら星が輝いている。
ビル群や街灯、標的が潜む建物の中。
俺はこんな景色を見たことがない。
照明と闇と建物と硝煙の臭い。
いつだって景色は赤と黒。
ここも暮れゆく夕日の赤に、少しずつ姿を見せ始める夜の闇。
どうしてこんなにも違うんだろう。
生きてる場所は変わらないのに。
『KK』
おもむろにMZDが声をかけてきた。同時にキラッと光を放つ何かを軽く投げて寄越された。
…銀色の指輪。
太い輪のシンプルな指輪だ。
『どうよ』
俺は困惑した表情を浮かべた。MZDは少し身を寄せて俺の手を包むように握る。
『“証”っつうかさ、何か俺専用みたいなシルシが欲しいかな~って』
MZDは自分の左手をヒラヒラさせた。薬指には俺がさっき渡されたものと同じ指輪が光っている。
『…あそ』
何だか急に気恥ずかしくなって指輪をポケットに突っ込んだ。
『おいおい、しまうなよ、付けようぜ~ソレ。勿論…俺と同じはめ方で♪』
『馬鹿野郎、そんな恥ずかしいこと出来るかっ』
『恥ずかしくねえだろ~ベッドの中より』
MZDが全てを言い切る寸前に、俺は自慢の相棒(モップ)を相手の右側頭部目掛けてハンマーのごとく打ち付けた。
普通なら軽く気絶くらいする程の威力はある。
が、流石『神』と言うべきか、痛がるだけで怪我一つ負っていない。
…ムカつく…
『モップは掃除用具だろ~?そういう使い方は良くねえって』
『何なら違う“掃除道具”で殺ってやろうか』
『そりゃご勘弁』
ニヤリと笑ったMZDの顔は、何だか楽しそうだった。
俺は頬を掻くと、また空を見上げた。
綺麗な、空だった。
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