中指と薬指

5/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
…ジリジリジリ… 聞き慣れた目覚ましの音で目が覚めた。 布団の中、隣には幸せそうに眠っているMZDがいた。 …誤解するなよ? 昨日の夜は日が暮れるまで神社にいたが、その後は一人で家帰ってカップラ食って寝たぞ。 …ずっと一人でな! つまりコイツは不法侵入者であって、しかも布団にまで勝手に潜り込みやがってて… 俺は枕の下から銃を取り出し、安全装置がちゃんと作動してるのを確認し… その馬鹿面めがけ、怒りのままに銃を振り下ろした。 ゴッ! ついでに二回追加。 ただでさえ重たいそれを何発も食らった馬鹿神は、顔を押さえて悶絶していた。 『イッテエえええぇぇぇー!!!』 俺は完全にそれを無視して作業着に着替える。 『けっ…KKッ…もっと優しく起こせよ…!』 『家主の許可なく侵入するヤツにかける優しさは持ってねぇ』 『ただならぬ仲なのに俺達v…ま、そんなツンデレなお前もマジでかわい』 ガコン!!! 言葉を言い切る間を与えず、先程の銃が空を飛びMZDの額にヒットした。 『出ていく時は布団しまっとけよ』 俺はベルトを締めながら、布団の上で額を押さえているMZDに声をかけた。 『…あ』 声に反応し振り向くと、MZDは何故か目を丸くしていた。 『…何だ?』 『………………いや、何でもない』 MZDは満面の笑みを浮かべて手をヒラヒラと振った。 訝しげに相手を見たが、まぁいいかと自分を納得させて俺は洗面所に行った。 『素直じゃねーけどホーント、可愛いヤツ』 MZDはクスクス笑いながら自分の指輪を見た。 薬指の指輪。 同じ指輪が、KKの左手の中指で光っていた。 素直に薬指にはめるのは気恥ずかしかったんだろう。 …指輪を見て悶々と悩んでいるアイツの顔が浮かぶ。 ニヤつきながらMZDは『影』と一緒に布団を片付けた。 『じゃ、また遊びにくるぜ~』 二度と来るな!と怒鳴るKKの声を背にし、施錠してある窓をすり抜け空に消えていった。 今日も空は澄み渡っている。 とても綺麗な水色だ。 KKは歯を研きつつベランダから空を眺めた。 今日は平穏な一日になるといいんだがなぁ… 左手を見つめ、少し照れくさそうに呟く。 中指の指輪を太陽にかざして… Fin.
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!