こんな感情、要らない。

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美しさとはかけ離れたネオン街。 ゴチャゴチャと品のない光が足下に広がっている。 俺はまだ硝煙の香りが残った銃を腰のポケットに突っ込んで、ビルの最上階・屋上にて煙草を吸っていた。 揺らめく紫煙。 足下には、先程までは人間だった肉塊が転がっている。 重みのある自分の靴のかかとで『肉塊』の頭を軽く蹴飛ばす。 生きている筈がない。 反応はまだ生暖かい血が胸元から流れてくるだけ。 溜め息。 うっかり接近して急所を狙ったせいで、普段は爽やかな水色のツナギが血に染まってしまった。 …生臭い… 帽子や顔まで血だらけ。 お気に入りのヘッドフォンが無事なだけマシか。 俺はこの肉塊を海に捨てなければいけない。 証拠湮滅は他の社員が担当している。 あと一時間もすればここで誰か死んだなんて判らなくなるだろう。 俺は『肉塊』を黒いゴミ袋に突っ込み、空気を抜いてから封をする。 生臭さと加齢臭だろうか。俺はしかめ面をしながら作業を終えた。 正直言って、この『肉塊』はちょい重たい。 闇に包まれているビルとビルの隙間に、そのゴミ袋を投げ捨てた。 小さく何かが潰れたような音が聞こえたが、気にしない。 時刻確認。午前2時43分。 ゴミの不法投棄は良くないが、アレが見つかる方がずっとヤバい。 俺は血塗れの顔をツナギの袖で乱暴に拭うと屋上を後にした。
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