序章..

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    そして、 最後に咲かせた花を見て 彼は微笑んだ。     『━…綺麗。』     …たった二言よ? それなのに、長年生きてきた あたしが照れてるの。   ━…情けない話よね。     『俺は浅倉 劉[アサクラ リュウ] ってんだ。…って何花に自己紹介してんだか。…..イカれちまったか、俺』     それで名前を知ったの。 浅倉 劉…。 劉…‥。     『しかし‥雨に濡れて寒くねぇのか?…あ、植物にとっちゃ恵みの雨か…』     劉はそう呟くと 椿の花に重たげに乗っていた 水の溜まった部分を 指で弾いて、軽くしてくれた     『折角の花が水の重りで落ちる所だったぞ』     …馬鹿ね、何気ぃ遣ってんのよ     それで落ちたとしても それは自然な定めなのに…。    
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