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それは買い物帰り。俺こと水橋 里流(みずはし さとる)は夜の道を歩いていた。
「はは、すごい!すごいぞ!キコリ!」
ふと、そんな声が聴こえた。
そして、それと共に…、
バキバキ…、クチャクチャ…。
気持ち悪い声が聴こえる…。
なんだろう?そんな好奇心が無ければ、この後のあんな事件に巻き込まれることも無かったかもしれないのに…。
クチャクチャ…。
「あは、あはははは…!」
段々と音と声が大きくなり、近づいているのがわかる。そこで見たのは…、
「あは、あはははは!キコリ!いいぞぉ!」
そこで見たのは…、腹を抱えて笑っているクラスメートの遠藤 一(えんどう はじめ)と、横たわっている血まみれの男と…、
「あはははは!いつまでも僕を舐めてるからそうなるんだ!キコリさえ…、キコリさえいれば…、僕は誰にも負けない…。」
遠藤に【キコリ】と呼ばれ、手に斧を持っている何かが…、横たわっている男を貪り食っていた…。
「は、はぁ…。はぁ…!」
俺の緊張は一気に限界点を突破する。そして…、
ジャリ…!
出してしまった。今、この状況で、 砂利を踏みしめた音を…!
「だ、誰だ…!」
遠藤がこっちに気付いた…。俺は、姿を表した。普通なら、逃げるだろう…。しかし、遠藤が気になったんだ…。
遠藤は真面目なやつだ。頭だっていい。それに、俺の友達なんだ。
「み、水橋…!」
「よぉ、遠藤。これは、一体なんなんだ…!?」
明らかに動揺する遠藤…。その時、【キコリ】が、
ぐるん!
と、首を回し、こちらを見た。そこではっきり【キコリ】の姿が見えた。それは、鼻が棒の様に高く、童話に出てくる小人の木こりの様だった。
しかし、その容姿に似合わぬ鮮血に染まった真っ赤な口。明らかに木こり、いや、人とは逸脱していた。
「み、み、水橋…!違うんだ!これは…!」
「遠藤…。」
「こ、こいつが悪いんだぁ!こ、この僕に金をよこせ、なんて言いやがって…、やめろって言ったのに…!」
そう言って、遠藤は横たわっている男を指差した。多分…、いや、絶対に…、死んでる…。
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